暮らしの中に広がる伊勢型紙に
着物の図柄を染めるために文様を彫り抜いた型紙として、
その昔は99%のシェアを誇っていた伊勢型紙。
常に着物業界とともに歩んできた。
しかし、生活のスタイルが変わるにつれて、
着物の需要は昭和の終わり頃から減り続けている。
伊勢型紙に携わる僕ら自身でその活路を見出さなければ、
このままでは死んでしまうとさえ思っている。
いま、未来に残していかなければと思う使命感と、
その良さを自分たちで伝えなければという危機感に突き動かされている。
伊勢型紙をつないでいく上で、絶対的なポリシーを持っている。
「変えてはいけないもの」と「取り入れていくもの」の間に
しっかりと線を引くことだ。
変えてはいけないもの、
それは和紙の型紙に文様を彫るのに機械は使わないということ。
型紙を彫る職人を守るためでもあり、
伊勢型紙の本質の部分は絶対に変えないと決めている。
一方で、文様に新しいモチーフを取り入れていくことに躊躇はしない。
それぞれの時代ごとに好まれる文様があったように、
常に新しいものへの見聞を広めながら、
今にあったモチーフを取り入れるようにしている。
日本人の着物という文化を支えてきた文様。
その時代を反映した文様を綿々と繋いできた伊勢型紙。
残念ながら、着物という世界で表現される機会は減ってきた。
しかし、日々の暮らしを見れば、建築、インテリア、洋服、雑貨と、
その文様が活かせるフィールドがある。
伊勢型紙をもっと暮らしの中に広げたい。
伊勢型紙を見つめる人
起 正明
株式会社オコシ型紙商店 代表取締役